昔から言われており、誰もが認める「企業は人なり」という格言は現場でどの程度活かされているのだろうか?
昨今は、表現を変えて「人的資本経営」と言われている。根底には、人を大事にしようという思想が流れていると思うが、経営者はどれくらい真剣に考えているのだろうか?
私は、「人を大事にする経営」に関して次のような基準で考えている。
1億円の機械・設備に投資する時、経営者は投資採算性を真剣に考えるだろう。自社の現状の設備状況や生産性・競合状況を評価し、3~5年後の業界の状況を予測し、当該機械・設備を導入する事によって、生産性はどの程度向上し、経営的にどの程度改善するのか。このような目途(目標)が立たない限り投資決定はなされないだろう。
しかしながら人材採用に関してはどうだろうか?
採用する人材が22歳から60歳まで38年間勤務するとした場合、その人の生涯賃金は単純計算すると次のようになる。初任給(22万円:社会保険料等含む)定年時給料(45万円)(沖縄県の平均的企業の賃金実態を参照)とすると生涯賃金は約1億8千万円(賞与・退職金あり)程になる。
採用する場合、人材への先行投資と考えられる(勿論、途中退社という事態も発生するが)。
人材は自身の賃金以上の働きをする人、賃金程度の働きをする人、自身の賃金ほどの働きもない人、様々であるが、賃金以上の働きで、会社の成長に大きく寄与するような人材に育てるのが経営者であり、経営幹部の大切な仕事ではないだろうか。
そのように考えると、上述の機械・設備への投資決定に比べて、一人の人材採用決定への経営者の関与度はどうであろうか?
自社の経営理念、ビジョン・ミッションと照らし合わせて、必要な人材なのか、磨けば光る人材なのか、社風に合うような人材なのか、人事部任せにせず経営者自身が責任をもって様々な観点から評価し、採用を決定する。採用後、育成に取り組む。そのように採用し育成した社員が人間的成長、実務能力向上を図ることによって、社員も幸せになり、会社も豊かになり成長する、というサイクルが完成する。
「企業は人なり」「人的資本経営」を志向する経営者は「人材の成長なくして企業の成長なし」ということを真摯に受け止め、人材育成に取り組んでいる。(企業が成長しているから人材が成長するのではない)
「ローマは一日にして成らず」というように、人材育成も時間と金がかかることを考えるとしっかりした「人材育成理念・方針」をかかげ、地道に取り組む必要がある。
現在の取組みが10年後、20年後の自社発展の礎になることを信じて、人を大切にする経営に取り組もう!!
株式会社CSDコンサルタンツ
代表取締役 西里 喜明
Comentarios