2024年7月から新1万円札のデザイン・絵柄が近代日本経済の父と言われる「渋沢栄一」翁に替わる。
これを機に翁の考え方をまとめた「論語と算盤」を通して経営の本質を考えてみたい。
翁は「出世や金儲け一辺倒になりがちな資本主義の世の中を論語に裏打ちされた商業道徳で律する。そして、公や他者を優先することで豊かな社会を築く。道義を伴った利益の追求⇒道徳経済合一説。」を唱える。
百数十年前の考えが色褪せることなく現代でも通用する、まさに「世の中の真理」ともいえる「道徳経済合一説」。その教えに照らして、豊かな社会構築を目指す考え方の基礎を固めよう。
自分さえ良ければ、自社さえ良ければ、の想いが強くなりすぎて、時には法を犯してしまう企業。あるいは法さえ犯さなければ何をやっても良い、というような手前勝手な解釈で軽率な経営活動に突き進んでしまうような企業。現代でも時々現れるグレーゾーンの急成長企業にその危うさを感じてしまう。
なぜ、そのような風潮、経営者が繰り返し現れるのだろうか。
自分の能力を自分の欲望達成のために発揮することは必ずしも悪いことではない。
しかし、その欲望が他者を陥れたり、傷つけたり、他者の存在を無視するようなものであっては、その能力発揮は、決して幸せを生まない。お互いを不幸にする社会になってしまうだろう。
豊かな社会を築くためには、渋沢栄一翁の勧める「道徳経済合一説」をベースとする道義を伴った利益の追求を行い、公や他者を優先する心を育てることが必要だ。
悪しき競争主義、利己中心主義を改め、利他の心を育て、「何のために経営するのか」という経営の原点を深く考えることが重要であろう。
経営の原点は社会課題を解決し、人々を「安心・安全な社会の中で、成長を志向し心豊かな人生を送れる」市民へと導くこと。そしてその市民を増やしていくことではないだろうか。
2千年前から人間の真理・生き様を問い、人間はいかにあるべきか、どのような社会を築くべきか、をまとめた「論語」。
社会発展のためには競争原理が必要であるとたどり着いた近代資本主義経済(「算盤」)。
この一見相反するような説を見事にまとめた「道徳経済合一説」を、今改めて多くの経営者に考えてもらいたい。
21世紀、グローバルサウスが発展し、地球社会が公正な利益を求めるようになってくると、まさに「公や他者を優先する心」を育て、皆が幸せになる機会の平等を創り出さなければ人類は生き残れない。
道徳心の篤い経営者が一人でも多く育ち、人を大事にし、人を育て、リーダーシップを発揮して、社会の柱である企業を正しく経営する。
このような経済界が求められているのではないだろうか。
株式会社CSDコンサルタンツ
代表取締役 西里 喜明
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