昔、「私は失敗した事がない」という先輩がいた。
聞いた時はなんと「ホラ吹き」な先輩だろうと思っていたが、時が経ち、いろいろ調べたり、経験していくうちにその本音が分かってきた。
致知2月号の特集に「遂げずばやまじ」が掲載された。
遂げずばやまじ―――目標をもったら成功するまでは絶対にやめないという固い言葉である。執念の極致を示した言葉といえる。古来、世に偉業を成した人は皆、この言葉を体現した人である。
日本の蘭学の先駆者、大槻玄沢(一七五七~一八二七)は生涯この言葉を自戒の語としていた。玄沢の言葉が残されている。
「およそ事業は、みだりに興すことあるべからず。思ひさだめて興すことあらば、遂げずばやまじの精神なかるべからず」
事業というのは気ままな気持ちで始めてはならない、心に深く決意して事を興すなら、何があっても必ずやり遂げるという強い思いを持って始めなければならない、ということである。
事業の失敗や倒産は現実に起こり得る事であるが、事業を興す上での覚悟やその時機、時機における強い思い、深い洞察を繰り返し、更に、取り組む姿勢は本当にこれで良いのか(良かったのか)と常に自分自身に問い掛ける必要性・重要性を考えさせられる言葉である。
さて、冒頭の先輩の言葉の真意は、できるまでやり続けることが大事だし、当該先輩はそう心がけていてあきらめることをしなかったということであっただろう。
私達が人間として成長する(人間力を向上させる)場面というのは、日常生活のおだやかさからだけでは生まれてこない。ある時機、相応の心の負荷を負って、自分自身の魂を磨き上げる時に一皮向けて成長していくものである。その負荷に耐える力は、肉体的体力と精神的体力が兼ね備わって大きくなると思う。
心身ともに豊かに、力強く育ち、耐性をきたえ、より一層強い人間、魅力ある人間になりたいものである。
株式会社CSDコンサルタンツ
代表取締役 西里 喜明
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