昨年から、ビジネス書や新聞(特に日本経済新聞)において企業目的、存在意義に関する発表が目につくようになっています。
折しも、岸田文雄首相が「新しい資本主義」を掲げて、日本経済の再生を図ろうとしているところであり、各経営者も大きな関心をよせているところです。
そもそもの発端は、「市場原理主義」等を特徴とする経済思想:新自由主義の行き詰まりからの転換が迫られていた米国における「ビジネスラウンドテーブル(BRT:米国の主要企業経営者をメンバーとする)の『企業の目的に関する声明』の公表」であると思われます。
■声明の概要(日本経済団体連合会リポートより)
同声明ではまず、企業は自由市場経済のなかで社会に不可欠な商品・サービスの供給、雇用創出、イノベーション等に重要な役割を果たしていることを指摘したうえで、すべてのステークホルダーに対するコミットメントを行うことを明らかにしている。すなわち、企業は顧客への価値の提供、従業員の能力開発への取り組み、サプライヤーとの公平で倫理的な関係の構築、地域社会への貢献、そして最後に株主に対する長期的利益の提供を行うことを明示した。
BRTでは、1970年代からコーポレートガバナンスに関する声明を公表しており、1997年以降は企業の目的を株主利益の実現ととらえていました。その結果が企業の行き過ぎた利益確保、株主利益の提供、格差社会の現出であり、新自由主義の行き詰まりであると考えられています。
日本でも、そのような社会環境の変化の下で、上述の「企業の存在意義」に関する記事・書籍が発表されるに至ったものと考えます。
もともと日本には新自由主義、株主優先の企業経営はなじまない経営風土があり、昔から近江商人の「三方よし:売り手よし、買い手よし、世間よし」や二宮尊徳の「道徳なき経済は犯罪である。しかし経済なき道徳は寝言である」、渋沢栄一の「論語と算盤」等々、儲け主義一辺倒とは一線を画した経済人の倫理観が尊ばれてきた歴史があります。
この機会に自社の経営のあり方(自社の存在意義)、経営者としての人生哲学(経営理念)をみつめなおし、一流の経営者を目指したいものです。
財を残すのは三流の経営者
事業を残すのは二流の経営者
人財を残すのは一流の経営者
人財の確保・育成は事業成長、企業の経営資産形成にもつながり、経営者として是非とも取り組まななければならない最重要事項です。
株式会社CSDコンサルタンツ
代表取締役 西里 喜明
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